プリンセス・バスタイム

連日の長時間勤務に疲れ果て、衝動買いした入浴剤。
『プリンセス・バスタイム』家のお風呂に入れるだけで、おとぎ話のお姫様気分を味わえるらしい。不規則な生活のせいか肌が荒れがちなので、美容効果の高そうな白雪姫の湯を選択。
ガラス瓶に入った、真っ赤なリンゴのバス・タブレット。可愛い見た目にまず癒される。わくわくしながら湯船に投入。
ふんわり漂うもぎたての香り。無色透明なお湯が、内側からほんのり光って見える。お風呂上りは白雪姫の様に、色白つるつるの卵肌。期待を膨らませ、足先を沈める。

くらりと意識が遠退き、お湯の中へ倒れ込む。
全身が焼ける様に熱くて、苦しい。早く出なければ、焦るばかりで動けない。それもそのはず、湯船に張ったお湯がガラスの塊に変わっている。
――そうだ、あれは毒リンゴだ、今更気付いても遅い。血の気の退いた身体は、ガラスの棺の白雪姫の様に蒼白いのだろうか。途絶える息の最後に思った。