君の髪を編むことは

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一日は長いのに一年というのはあっという間だ。ぼんやりとそんなことを考えながらミサオの長い髪を三つ編みにしてやる。
「リク、上手くなったね」
ヘアカラーで傷んだミサオの髪は時の流れを感じさせる。
「美容師だからね」
歪んでいないはずだ。三つ編みも美容師になった理由も。白いスカートから覗かせたミサオのふくらはぎは筋肉が落ちてしまって、バスケ部の名残は微塵もない。
「今度は仕事中に行くからね」
「今度…」
僕達の"今度"はあと何回残っているだろうか。僕の視線の動きを察知したミサオは左手を挙げてみせた。
「私結婚するの。男性と。女性として私を見てくれる人に出会えたの」
「そうか。良かったね」
「ありがとう」
僕はきっと髪を編んできたわけじゃない。君の黒髪も学ラン姿もバスケットシューズを一緒に買いに行ったあの日も全部。
「終わったよ」
「……素敵」
この気持ちは君に見つからないようにほどいておく。
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公開:19/12/26 23:08
更新:19/12/26 23:10
節目

菫永 園(すみなが えん)

書いたり喋ったりする金髪ギャルのひとです。時空モノガタリ出身。

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