6
7
死んだ友人から、「君はさっきまで満月湯にいたね」と急なメールが入ったので驚いたのだが、確かに私は先刻まで近所の銭湯にいたものだから、なにから聞き返したらいいのかもよくわからずぽかんとしていると、彼のほうから連絡が来た。以下がそのやりとりである。
「前にいたの、あれ俺だったんだよ」
「ずいぶん太ったね」
「とり憑いてたんだ。幽霊のままだと湯に浸かっても意味がないから生きてる人間に軽めにとり憑いて、その気になってもらって銭湯に入らせるんだよ。そうでもしないといまどき銭湯なんてそうそう行かないよ」
「なんだかかわいそう」
「本人もその気にはなってるんだからwin-winだと思うけど」
うむ。確かに露天風呂の湯船の前にいた彼はずいぶん惚けたような顔をしていた。あれがとり憑かれている人間の顔なのか。へえ。
それを拝みにいま再び一度銭湯に行きたくなってきた私の口から、おおきなあくびがひとつ出た。
「前にいたの、あれ俺だったんだよ」
「ずいぶん太ったね」
「とり憑いてたんだ。幽霊のままだと湯に浸かっても意味がないから生きてる人間に軽めにとり憑いて、その気になってもらって銭湯に入らせるんだよ。そうでもしないといまどき銭湯なんてそうそう行かないよ」
「なんだかかわいそう」
「本人もその気にはなってるんだからwin-winだと思うけど」
うむ。確かに露天風呂の湯船の前にいた彼はずいぶん惚けたような顔をしていた。あれがとり憑かれている人間の顔なのか。へえ。
それを拝みにいま再び一度銭湯に行きたくなってきた私の口から、おおきなあくびがひとつ出た。
ホラー
公開:19/12/26 22:28
たまに書きます。
ログインするとコメントを投稿できます