季節のマエストロ

「さあできた」
神さまは四季棒を作りました。季節の節目節目を奏でるこの世界になくてはならないものです。
今年の四季者はねずみです。ねずみは森の切り株の舞台にいました。神さまは四季棒をねずみに渡して消えました。ねずみが四季棒を振ると小川に音符が落ちてきました。春のメロディーが流れ始めます。レンゲが野原を埋めつくし山桜が満開に咲きました。
桜が散ると、激しく四季棒を振ります。夏の演奏が始まりました。向日葵たちが風のダンスを踊って蝉が夏に抑揚をつけます。
ねずみは四季棒をたおやかに振ります。秋の演奏です。枯れ葉が舞い紅葉が鮮やかに森を彩りました。
いよいよグランドフィナーレ冬を奏でます。四季棒を振ると北風がコーラスを歌い、ねずみは凍えながらも美しい白銀の雪を降らせました。

ねずみは力尽きました。眩い光がねずみを包むと神さまが現れました。
「名曲だった」神さまはねずみを抱いて光と共に消えました。