猫の妖菓子店

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猫の妖菓子店の扉を開けると、妙なお菓子が並んでいた。
「闇を溶かすチョコ」「恋がトロけるプリン」「心の穴を埋めるドーナツ」などなど。
猫の店主が、僕の傍に来た。
「いらっしゃい」
猫は目を光らせて僕を見た。意識が吸い込まれる感覚だった。
「なるほどね」
猫は、棚からお菓子を取って見せた。
「こちらのフーセン我夢がよろしいかと」
「フーセンガム?」
フーセン我夢を噛みしめると涙が溢れた。亡くなった母さんとの思い出がふくらんできたからだ。悲しみは萎んで消えた。すると僕の夢がフーセンみたいにふくらんできた。そうだ!画家になることだった。

パーン!

「夢に目覚めたようですね。夢が失望を希望に変えたのです。失望や困難は節目と言われています。節目から芽が出て希望の花を咲かせたのです」
「ありがとう!」
もう一枚の我夢を噛むと、猫の妖菓子店も僕もパン!と弾けて消えた。
僕はアトリエで絵を描いていた。
ファンタジー
公開:19/12/24 18:36
更新:19/12/29 02:03
お菓子 節目

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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