節句の君

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私がそれに気付いたのは、高校生の頃。アルバムを捲っていて、偶然発見した。
保育園の入園式。日付入りの写真と、父が添えた覚え書き。その隅に一言。
『おめでとう』
台紙にはみ出た下手くそな字。探せば他にもあった。『頑張れ』『やったな』『もう少し』写真の節目節目に、ぽんと肩を叩く様に。
高校の卒業式、記念写真を貼ろうとして、入学式に、なかったはずの『おめでとう』を見付けた。
不思議と怖くはなかった。写真が増える度、いつの間にか書き込まれる。時々笑って、時々泣いて。思い出と一緒に追い掛けた。

結婚式の前夜、先撮りしたドレスの写真を貼った。
賭けだったのかも知れない。
『幸せに、』
それが最後。私はアルバムを畳み、結婚式を挙げた。


――今。ペンを握った夫が、悪戯を知られた子供の眼で、私の手元を追う。
「途中だぞ。『します』まで書かせろ」
「これでいいの」
くすくす笑って、アルバムを抱き締めた。
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公開:19/12/24 00:59
節目の句(言葉)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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