御伽話火葬

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 今日も灰が空を漂う。
 「御伽話火葬法」が成立されてから、毎日のようにおとぎ話の主役が火葬されている。主役がいなくなった話はストップし、自然消滅してしまうのだ。
 今日はヘンゼルとグレーテルだ。二人で最後となるらしく、これで灰ばかりの日々が終わる。折角なので公開火葬を覗いてみることにした。
 そこではもう、台の上の子供たちが、今まさに焼かれる直前だった。
 国の偉い人が合図を出そうとした瞬間、ヘンゼルが叫んだ。
「どうして死ななきゃならないんだ!」
「都合良く善人だけがハッピーエンドで終わる御伽話のせいで、公正世界仮説が広まってしまい、被害者なのに悪者扱いされる人がいるのだよ」
 偉い人が冷たく告げた。妹の方も口を開けた。
「私たちは関係ないじゃない!だって……」
 憎悪で魔女を殺して金品を盗み、幸せを手にいれたって話なのよ?
 台を飛び降りた兄妹は自分達の幸せを掴みとろうとし始めた。
その他
公開:19/12/25 13:19

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