包み

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 私が小学生の頃だ。
 母が、新聞紙に包んだ子供の頭ほどの大きさのものを家に持ち帰った。
 私はその中身が気になって仕方がなかったが、母はそれを私の手の届かない場所に置いてしまった。
 その夜、帰宅した父に母がひそひそ話しているの、私はこっそり聞いていた。
 ほとんど聞きとれず、わかったのは一つの単語だけだ。

 ヴァンピール

 本で読んだことがある。吸血鬼。
 もしかして、あれは吸血鬼の首なのか。
 私は昼間触れた塊の、重い感触を思い出した。
 心臓がドキドキした。
 何故、母は吸血鬼の首なんて持っているのだろうか。

 首は一ヶ月経っても、そのまま置かれていた。
 私は母が出かけた隙に、包みを開けてみることにした。椅子に乗り思い切り手を伸ばす。
 指が触れたと思った途端、包みが床に落ちて転がった。
 勢いで新聞紙が解ける。

 清々しい香りの晩白柚(ばんぺいゆ)が転がり出た。
 
 
その他
公開:19/12/25 07:23

堀真潮

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