母娘暮らし
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老いた母が、小さな人形を二つ窓際に置いた。
「お雛様」
「もうそんな時期だったかしら」
私はカレンダーを見た。桃の節句にはまだ早い。
以前は、何処からか漂う沈丁花の香で春を知ったものだけれど、今は何の香もしない。
「ねえ、梅祭りはいつだったかしら?」
「お母様。梅林はとっくの昔になくなってしまったわ」
「そうだったかしらねぇ」
梅林だけではない。
私達の家の窓から見えるのは、砂だけだ。
母と私、二人を除いて、世界は滅びた。
滅びの前日、神様が母の枕元に立った。
神様は母に「明日、世界は滅びるが、心の清いお前達母娘は助けてやろう」と言ったそうだ。
母は、それを受け入れた。神様の話など、全く理解していないのに、受け入れた。
この世界で生きているのは、老いた母とそれを世話する孝行娘の私だけ。
「お母様、もうオムツを外さないでくださいね」
もう誰にも頼ることはできない。
「お雛様」
「もうそんな時期だったかしら」
私はカレンダーを見た。桃の節句にはまだ早い。
以前は、何処からか漂う沈丁花の香で春を知ったものだけれど、今は何の香もしない。
「ねえ、梅祭りはいつだったかしら?」
「お母様。梅林はとっくの昔になくなってしまったわ」
「そうだったかしらねぇ」
梅林だけではない。
私達の家の窓から見えるのは、砂だけだ。
母と私、二人を除いて、世界は滅びた。
滅びの前日、神様が母の枕元に立った。
神様は母に「明日、世界は滅びるが、心の清いお前達母娘は助けてやろう」と言ったそうだ。
母は、それを受け入れた。神様の話など、全く理解していないのに、受け入れた。
この世界で生きているのは、老いた母とそれを世話する孝行娘の私だけ。
「お母様、もうオムツを外さないでくださいね」
もう誰にも頼ることはできない。
その他
公開:19/12/22 22:38
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tamanegitarou1539@gmail.com
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