マーガレット

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 教会裏の路地を縫って三つ目の外灯を曲がると、西洋レストラン『マーガレット』にたどり着く。私が生まれる前からの人気店で、祖父が祖母に、父が母に、プロポーズをした店だ。
 私が生まれてからも家族の晴れの日にはこの店に通い、私もいつか恋人ができたら、ここでデートをするのが夢だった。

 漆喰の壁一面に描かれた数式が、ぼんやりと月明りを湛えて店内を照らす。店中央にあるピアノの鍵盤上で緑のクマがステップを踏むと、静かにロックが響いた。
 祖父お気に入りの赤ワイン。父の好物だったオニオングラタンスープ。ナイフとフォークは外側から使うんだと、母に教わった思い出。祖母が真似して作ってくれたベリーシャーベット。
 食事を終えて彼女に指輪を渡すと、彼女は泣いていた。


 先に居なくなったのは、どちらだったか。渡せなかったパールの指輪と妻の遺骨を見つめながら、私は湯気になって、ロックと月明りに溶けていった。
ファンタジー
公開:19/12/22 20:19
更新:19/12/24 09:52
節目 あだむうすファミリーの食卓

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