男をたぶらかすインフルエンザ

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  インフルエンザなんて大嫌いだった。
 十日前にインフルエンザの妖精の男の子ルエンザに会うまでは。
 ルエンザが作ってくれたホットケーキは、黒焦げで苦かった。
 ラブ・ロマンス映画を一緒に観ると、ルエンザが泣くから話がわからなくなった。
 
 インフルエンザが治ってルエンザが窓から出て行こうすると、強い風と共に少女が現れ、ルエンザは部屋の中に押し戻された。ルエンザと瓜二つの顔をした妖艶な美少女は、俺の肩に手を回した。俺がその手からすり抜けると、少女は冷たい息を吐きだした。
「インフ、ダメだ!」
 ルエンザは少女を窓の外に突き飛ばし、自身も空の彼方に消えていった。
 
 インフルエンザになればルエンザに会える。俺は地下のバーやクラブなど人の密度が高そうな所に入っていった。夜道を彷徨っていると、空から透明の結晶が舞い降りてきた。
 薄れていく意識の中で求めていた声を聞いた。
「迎えにきたよ」
ファンタジー
公開:19/12/22 10:58
更新:21/08/19 13:32

文月 楓

ゆるりと作品を創っていきたいと思います。
どの作品にでもコメントいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたします。

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