いい人、やめます。

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「ピンポーン」
年の瀬の午前3時、インターホンが鳴った。こんな夜更けに誰だろう。
僕はモニターを確認して驚いた。自分にそっくりな人間が立っていたのだ。

「大事な用があって来た」
男は話し始めた。
「お前は『いい人』と言われるだろう?」
「そう言われます」

「しかし、昨日はひどかった。京都駅で1時間も立ち話なんて、よく風邪を引かなかったもんだ」
「よくしゃべる奴だったから」

「さすがに迷惑なんで、『いい人』をやめてもらいたい」
「いや、嫌われたくないし……」

男は語気を強めた。
「『いい人』は『都合のいい人』だ。分かるか?」
差し出された紙には「誓約書」とある。
「サインするまで帰らない」

悩んだ末に、渋々サインした。
「私は『いい人』をやめることを誓います」
満足そうに、男は去っていった。

誓約書は今も手元にある。努力はしているつもりだ。

さもないと、またアイツがやってくる。
その他
公開:19/12/22 05:39
更新:19/12/22 05:43
節目

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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