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「この村で一番美しい女を俺に捧げろ」
竜の俺は確かにそう言った。うん。間違いない。
俺は捧げられたものを見た。猫だ。どう見ても猫だ。
美しい猫。気品に溢れている。
いやいやいや。違う違う。俺は求めたのは人間の女。これは女ではなく雌!
村の連中め!命欲しさに俺を謀ったな!許せん!丸焼きにしてやる!
『待って下さい』
鈴を転がすような美しい声。猫が俺に訴えかけていた。
『貴方様のような偉大な御方が私の様な娘では満足しない事は分かっております。しかしどうか、どうか村の皆をお許し下さい』
その姿に、その涙に、不覚にも俺はキュンとした。
顔が熱い。口の中の炎が不完全燃焼で煙を上げる。
ま…まあ、お前は美しい。仕方ない。今回は許してやろう。
『ありがとうございます。お優しいんですね』
キュン!

「あの猫、上手くやっているじゃろうか?」
「大丈夫。あの猫は心を奪う事にかけては天下一品の泥棒猫だからの」
ファンタジー
公開:19/12/23 18:23

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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