擦れるシーツと確かな寝息。

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 午前零時。
 電話口からは規則的な寝息が聞こえてくる。
 「ねえ」と、声をかける。返答はなく、擦れるシーツの音がする。
 「まあ、いいや。あのね…」



 私たちには、お互いに“ひとりぼっち”の過去や、裏切り、悪口…辛くて苦しいのに、どうしようもなくて、もがいた過去があって…。死にたくなったりもしたね。
 けど、ただ辛いだけじゃなかったとも思うの。苦しみや辛さが今を生きる糧になったり、された側にしかわからない痛みを知ったりもした。
 だから、どんなに嫌な出会いでも、出会う価値があるから、人生のなかにあると思うの。出会う価値のない出会いなら、きっと人生のなかになんてない。
 辛い出会いは、私たちを少しだけやさしく、少しだけ強くしてくれたのかも。
 ねえ、生きていてくれてありがとう。
 私と出会ってくれて、ありがとう。



 擦れるシーツの音がして、あなたの確かな寝息が聞こえた。
その他
公開:19/12/21 00:55
更新:20/04/27 11:44
ありがとう 生きていてくれて

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人1年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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