うりうり

4
7

 ある夏の夕方、裏の木戸を開けて帰宅すると、妻が縁側に座っていた。
 僕も一緒に並んで涼む。
「そういえば、今日うりうりが来たわ」と妻が言った。
「うりうり?」
「そう、うりうり。とっくに絶滅したかと思っていたけど、まだいたのねぇ。そこの木戸の所から入って来て……」
「ちょっと待て。お前、そのうりうりを家に入れたのか?」
「入れたのかって、この庭までよ。なんか懐かしくて」
「うりうりをか?」
「そうよ」
 うりうり? 懐かしい? 僕は混乱した。
「そっ、そのうりうりが何の用だったんだ?」
「嫌だ、あなた。うりうりの用なんて一つに決まっているじゃない。ほら」
 見ると、大きな瓜が台所のテーブルに置いてあった。
「リアカーで売りに来たのよ。珍しいわよね」
 うりうり。何だ、瓜売りのことか。

 じゃあ、うちの木戸から続くリアカーの轍と並んで付いていた、あの不思議な足跡は何だったのだろう。
ファンタジー
公開:19/12/21 00:19

堀真潮

朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter  @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容