奥手なむすめ

6
4

母は綺麗で優しかった。わたしが6歳の頃、なかなか乗ることができなくて泣きべそをかいていたときも

「だいじょうぶ。あなたならきっとできるわよ。なんたって、わたしの娘なんだから。」

と微笑んで頭をなでてくれたのをおぼえている。

そんな母は8歳の時に死んでしまった。以後、祖母がわたしのめんどうをみてくれることになったが、できないままでいた。

そして16歳の誕生日、ついにわたしは乗れるようになった。

「あのこもあんたと同じように奥手でね。なかなかほうきで飛ぶことができなかったんだよ。でも、この偉大なるマリアの血をひく娘だ。できないわけがない。」

そう言って、祖母は笑顔でわたしの頭をなでてくれた。私の家系は400年以上続く魔女の一族。これでやっと一人前にちょっとだけ近づけた気がする。

「め、メリンダ、ついにやったなああ!」

野原の隅に一本だけある大木の陰で見つめる父が大泣きしていた。
ファンタジー
公開:19/12/19 07:00
更新:19/12/23 23:57
220 魔女の家系 箒で飛ぶ練習 父親はただのニンゲン オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

ツイッター
https://mobile.twitter.com/ookami1910

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容