覚悟

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兄が難病を患った。
自分の免疫が自身を攻撃し、筋力が落ちていってしまう病気らしい。
ダーツが投げられなくなったことに違和感を持ち、病院に行くと、即入院を告げられたようだ。
日に日に弱り、遂に握力は"4"となった。
お箸を使うのも困難だという。
見舞いへ行くと普段はおちゃらけた兄がいつになく真面目な顔つきで私を見つめた。
「母さん達を頼む。」
マンガやドラマでしか聞かない言葉。
一瞬の沈黙が空気を張りつめさせる。
「縁起の悪いことは言うなよ。」
普段のジョークと同じように笑い飛ばす。
再び生まれそうになる刹那の沈黙に耐えることができず、他愛ない苦し紛れの会話を繋いだ。
あれから2週間が経った。
覚悟はできた。
否、せざるを得なかった。
気持ちを整え、意を決して病室へ入った。
兄はベットで仰向けになり、天井に向かって腕を伸ばしながら週刊少年誌を読んでいた。
兄は照れ笑いをし、私を迎えた。
その他
公開:19/12/18 15:48

高虎( 大阪 )

大阪はミナミでバーテンダーをしております
純文学を好んで読みます

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