きれいな汚れ

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「落ちにくい汚れ、目立たない汚れ、きれいな汚れ。一番悪いのはどの汚れでしょう?」
 微笑む教師は教室の子供たちに尋ねました。ハイ、と新入りの少年が挙手しました。
「質問があります」
「どうぞ」
「きれいなら、汚れではないと思います」
 微笑む教師は大きく頷いて言いました。
「みんなはどう思いますか? きれいなら汚れではないと思いますか?」
 子供たちは一斉に挙手して、
「ビラ」
「ご真影への落書き」
「往来の立て看板」
「流れ着く包装紙」
 と、きれいな汚れを答えました。
 微笑む教師は大きく頷き、始めに質問をした少年を見つめました。少年は前を向いたままポロポロと涙を流しました。微笑む教師は大きく頷き、教室を見回します。
「汚れは、どうしますか?」
「白ペンキ! 白い煙!」
「そうですね。ではご奉仕に参りましょう」
 外鍵が解錠され、微笑む教師と少年以外の子供たちは、教室を出ていきました。
ファンタジー
公開:19/12/18 13:56
更新:19/12/18 13:59

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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