望遠鏡
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船乗り見習だった時のことだ。
不思議な望遠鏡を覗いたことがある。
それで覗くと、次にその船の着く先が、どんな場所か見える。
大きな港町に向かっていたのに、寂れた漁村の村が見えた時があった。その時は思わぬ時化にあい、途中で小さな島の漁村に寄ることになった。
ある時、とても綺麗な街が見えた。
花が咲き乱れ、広場の真ん中には噴水がある。
次は、とても素敵な街だと言うと、周りの船員達も見せてくれと覗きに来た。
だが、真っ暗で何も見えないと言う。
「いい加減なことを言うな、ガキ! 壊れてんじゃないか!」
大人達はそう言って殴った。
街の話をするのはやめた。
結局、望遠鏡が壊れていたかどうかはわからないままだ。
船が沈んだからだ。
大海原の真ん中で、誰一人生き残ることはできなかった。
冷たい海の底に沈んで行きながら、僕はようやくあの美しい街へたどり着くのだと思った。
不思議な望遠鏡を覗いたことがある。
それで覗くと、次にその船の着く先が、どんな場所か見える。
大きな港町に向かっていたのに、寂れた漁村の村が見えた時があった。その時は思わぬ時化にあい、途中で小さな島の漁村に寄ることになった。
ある時、とても綺麗な街が見えた。
花が咲き乱れ、広場の真ん中には噴水がある。
次は、とても素敵な街だと言うと、周りの船員達も見せてくれと覗きに来た。
だが、真っ暗で何も見えないと言う。
「いい加減なことを言うな、ガキ! 壊れてんじゃないか!」
大人達はそう言って殴った。
街の話をするのはやめた。
結局、望遠鏡が壊れていたかどうかはわからないままだ。
船が沈んだからだ。
大海原の真ん中で、誰一人生き残ることはできなかった。
冷たい海の底に沈んで行きながら、僕はようやくあの美しい街へたどり着くのだと思った。
その他
公開:19/12/18 07:32
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