夢の始まり

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お笑い芸人として夢を追ってた自分と別れて1年が経った。売れない芸人ではあったが、劇場ではそれなりの人気があり、多くはないが、ファンもいた。
しかし妻の妊娠がわかり、夢を諦める決意をした。家族に必要なのは安定だと思ったからだ。
志半ばで道を閉ざし、一般企業の社員として働く自分に完全に納得したと言えば、嘘になる。


「いない、いない」
自分の顔を隠す。隠して間もなく
「バァ〜!」
とおどけた表情の顔を見せる。
手を広げたと同時に視界に映るのは、先月生まれたばかりの我が子の笑顔だ。
目を細め、大きな声で笑う我が子の笑顔は、とても愛くるしい。舞台上で沢山のお客さんの笑い声を聞いたときとは、また別の感情が込み上げてくる。
一度は諦めた夢が、違うかたちでスタートした気がした。僕はこの子の専属お笑い芸人になる。
そして、この子の笑い声を誰よりも多く聴きたい。
青春
公開:19/12/19 23:04
更新:19/12/20 13:21

リンゴスター( 東京 )

よろしく。

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