我が家の食卓

我が家の食卓を捨てることにした。

ぐらついて危ない気もする。近々、娘夫婦が孫を連れてやって来るからだ。

天板のクロスを外して自宅の前に運び出すと、太陽がいくつもの染みを照らしていた。
娘が食べこぼしたシチューやカレー、息子が落書きしたインクのあと、子育てがうまくいかなくて零した涙……。
私は食卓の中に染み込んでいった——
「ごめんなさい。あなた……」
「いいんだ。僕のことを思い出すんだろ」
亡き夫がいつも座っていた場所。
染み込んだ夫との思い出が消える——

ほんとはね、心がぐらついて、耐えられなかったの……。

「お母さん、食卓買い替えたの？」
「ううん、大工さんに修理してもらったのよ」
天板も脚も丈夫になった。
孫が夫の席ではしゃいでいる。

家族の 死 という節目は乗り越えられるものではない。向き合って、寄り添って生きていくものだ。食卓はそう語るように、今の私を支えてくれている。