私たちの反抗

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 声が聞こえた。
「私はね、普通なんてつまらないって思うんだ」
 それは彼女の口癖だった。
 僕は、真夜中の校庭に一人立っていた。
 なけなしの勇気を振り絞って、ライン引きと共に歩き出す。

 完成した文字列を見て、羞恥を覚えた。今すぐに消したい、という気持ちに駆られたが、しかし朝にならなければ、遠くの空からは見えないだろう。伝わらなければ、意味は無い。
「僕もね、普通なんてつまらないと思う」
 普通とは、すばらしいことだ。当たり前にあるものが、当たり前にあるのだから。無いならば、普通はいらない。
 結局、就寝したのは日が出始める頃だった。
 無機質なアラームを止めてぼうっと立っていると、柔らかい声色が耳に響いた。なんと言っているかは分からなかったけれど。
 ただ一つ分かることは、遠くの空へ届けようとする必要は無かったということだ。
 その日以来、声はもう聞こえなくなった。
青春
公開:19/12/19 13:22

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