忘れてしまえば
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その男は、いつも橋で手紙を見ていた。そして歩くときにも、三歩歩いては、ポケットから手紙を出して眺めていた。
どうしてそんな事をするのか、聞いたことがある。
「私は、三歩歩くと大事なことを忘れてしまうのです」
そういう病気なのだと、その男は言った。
「この手紙は、昔の恋人からの手紙です。僕の頭がこんな調子だから別れることになりましたが、離れていてもずっと想い続けると書いてあります。彼女のことを忘れないために、僕は思い出の場所に来て、三歩歩くごとに手紙を見るのです」
もう何年も、男はそうしていた。
ところが、ある風の強い日のことだ。手紙が飛ばされた。
男は慌てて追いかけたが、手紙は川へと落ちて行った。
「あれ? 僕はこんな所で何をしていたんだ? まあ、いいか」
三歩以上歩いた彼は、想いを忘れた。
いちいち手紙を開かなくなった彼は、今までとは違う軽い足取りで橋を渡って行った。
どうしてそんな事をするのか、聞いたことがある。
「私は、三歩歩くと大事なことを忘れてしまうのです」
そういう病気なのだと、その男は言った。
「この手紙は、昔の恋人からの手紙です。僕の頭がこんな調子だから別れることになりましたが、離れていてもずっと想い続けると書いてあります。彼女のことを忘れないために、僕は思い出の場所に来て、三歩歩くごとに手紙を見るのです」
もう何年も、男はそうしていた。
ところが、ある風の強い日のことだ。手紙が飛ばされた。
男は慌てて追いかけたが、手紙は川へと落ちて行った。
「あれ? 僕はこんな所で何をしていたんだ? まあ、いいか」
三歩以上歩いた彼は、想いを忘れた。
いちいち手紙を開かなくなった彼は、今までとは違う軽い足取りで橋を渡って行った。
その他
公開:19/12/16 21:40
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