月と竜

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炎のように赤い身体に、金色に輝く瞳を持った竜がいました。彼の名は紅蓮といいました。紅蓮には恋人がいました。月光という、雪のように鱗が淡く発光する碧眼の竜です。
紅蓮は人間たちの起こした戦争に巻き込まれ、片翼を失いました。紅蓮の傷は身体を蝕み、もう使えないからと人間達によって僻地に棄てられました。それでも彼は人間を恨みませんでした。彼は人間がとても好きだったからです。
月光は紅蓮をずっと探していました。ようやく僻地で彼を見つけた時、月光は涙を流しました。月光は人間を恨みました。彼を酷く傷つけ、最後にはこんな所に棄てた事が許せませんでした。
眠っていいのよ、目が覚めたらまた一緒にあの空を飛びましょう。紅蓮はゆっくりと目を閉じました。月光は哀れな恋人を想い泣きました。
地球を滅ぼし、月に移住してきた人間達。月に来てなお戦争を続ける人間達。月光はもう終わりにしようと、月の自衛装置を発動させました。
ファンタジー
公開:19/12/16 10:04

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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