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この土地の生まれでない人に「ニンマさん」の事を伝えるのは難しい。ニンマさんは住所不定無職の老人で、擦り切れたズボンと何色か分からないダッフルコートを着ていて、素足に健康サンダルをつっかけて、風呂包みを抱えて歩いてくる。土地の人々はニンマさんを迎えると一緒に食事をし、風呂に入ったりする。着替えも用意するのだが、次の節目にやってきた時には、いつものズボンとコートに戻っている。ニンマさんはお風呂でどこの言葉かわからない歌を歌い、二三本しかない歯を見せてケタケタと笑う。ニンマさんに、前に会った後に起きたいろいろなことを話すと、ニンマさんはケタケタと笑う。家中にケタケタ笑いが響き渡る。それを聞くと「節目」を実感するのだ。
「次はいつ、ニンマさんが来てくれるの?」
「次の節目さ」
「節目って何?」
「ニンマさんが来ることさ」
この土地の生まれでない人に「ニンマさん」の事を伝えるのは難しい。
「次はいつ、ニンマさんが来てくれるの?」
「次の節目さ」
「節目って何?」
「ニンマさんが来ることさ」
この土地の生まれでない人に「ニンマさん」の事を伝えるのは難しい。
ファンタジー
公開:19/12/16 08:28
節目
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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