あげぽよ

「マスター。あげぽよ、一つ」
外回りの帰り、立ち寄った喫茶店に入るなり部長はそう注文した。
「何だ？俺みたいなオジサンがあげぽよを頼むなんて意外か？」
驚く私に部長は怪訝な顔をする。そうじゃない。
「まあ今時、あげぽよなんて時代遅れだよな。今はタピオカブームだ。あげぽよブームが終わった今、食べられるのはこの店ぐらいだ」
えっ？あげぽよって食べ物だったっけ？流行はしたが少なくともそんな事実は知らない。
あげぽよはすぐに出てきた。コロッケの様な姿形をしている。
「どうだ？君も久しぶりに食べてみないか？」
いや、久しぶりも何も初めて見る。しかし今更知らないなんて言えない…
知ったかぶりをする事にした私は久しぶりを装い、あげぽよを口にする。
何だこれ！凄く美味しい！触感！舌触り！最高！
私はすぐにあげぽよの虜となった。
そして今ではあげぽよよりやきぽよの方が好きだ。
さらに言えばタレより塩である。