期待されない努力

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「電源入れるなよ。電源入れるなよ。電源入れるなよ」
とA。会社のコピー機を、社員Aが直している。裏ブタを開け、頭を突っ込んでいる。
「絶対、前フリじゃないからな」
とA。ここは某中小企業。今、外出中の社長が、出費にうるさく、下手に修理業者を呼べない。しかしみんなは、仕事が遅れるのを社長のせいにできるから平気。だからAの事を、余計な事をして、とバカにしている。Aが何を言っても、相手をしない。
 一時間後、社長が帰社。開口一番、更に経費削減すると言った。皆の顔が、曇る。今でさえ、コストぎりぎりでやっているのに。これ以上、何をすればいいというのだ。
「今月、さらに二万円を削減するぞ!」
 え。二万円? コピー機の修理代じゃん。そして修理は、先程、Aが済ませた。
 社内の片隅から起こった拍手が、瞬く間に社内中に広がる。全員がAに向け、拍手を贈った。社長だけがキョトンとしている。
公開:19/12/17 18:08
更新:19/12/17 18:10

久保田 人月

よろしくお願いします。
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