雨のせい

2
5

 天気が悪い日は体調が悪い。
「頭が痛くて」
「雨のせいね」
 職場の先輩が言った。
「肩が重くて」
「雨のせいだ」
 同僚も言った。
「怠いんですけど」
「雨のせいですね」
 病院でも頭痛用の痛み止めを貰って終わった。
「あーあ。なんか体質改善の漢方でも飲んだ方がいいのかな」
 独り言を言いながら、病院のトイレで手を洗っていると、鏡に見慣れないものが映っているのが見えた。
 どんよりと雨雲のようで、ぶよぶよとした何かが、おぶさっている。
 耳元でサーサーと音がする。
 ひどく重くて冷たい。

 雨の精、だ。

 こんなものに乗っかられているのだから、体調も悪くなるわけだ。
 みんな見えてるなら、もっとハッキリ教えてくれればいいのに。そしたら病院なんかじゃなくてお祓いにでも行った。病院代、勿体ない。
「あーあ」
 天気と同じ晴れない気持ちで、ビルのトイレの小さな窓から空を見上げた。


 
ファンタジー
公開:19/12/17 07:30

堀真潮

朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter  @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容