節目鏡

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京都を旅行中、ある古刹の境内で骨董市をやっていたので立ち寄ってみた。
歩いていると、神々しく光を反射する年代物の鏡を見つけた。
「これは魔鏡ですか」
「お客さんはお目が高い。平安時代に作られたとされる魔鏡の一種で『節目鏡』です。
京都に縁のある偉人や由緒ある物の名を節目鏡に向かって呼ぶと、そのものの節目となった出来事が鏡に映し出されます。せっかくの機会なので試しにどうですか」
店主の説明を聞きながら興味津々だったこともあり、先ほど金閣を拝観したばかりだったので、節目鏡に向かって「足利義満」と呼んでみた。
すると、室町時代の建立されたばかりと思われる金閣寺が鏡に映し出された。金箔が貼られた三層の煌びやかな姿だ。
掘り出し物と思い節目鏡を買い求めた。
帰りの新幹線で節目鏡に向かって「節目鏡」と呼ぶと、平安時代に活躍した陰陽師の安倍晴明とおぼしき人物が魔鏡に霊力を加えている姿が鏡に映し出された。
その他
公開:19/10/07 21:02
節目 京都 魔鏡 平安時代 金閣 足利義満 室町時代 陰陽師 安倍晴明

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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