札束に囲まれて

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 やあ、僕は天使。君の願いを叶えてあげる。
 迷うことなく彼は願った。
「札束に囲まれた生活をしたい!」
 かしこまりましたと天使はにっこり微笑んだ。
 そう言うわけで。 
 札束でトランクはいっぱい。
 札束でベッドを作って寝そべる。
 札束風呂に入る。
 そして、札束を燃やして暖を取る。
 妻は、彼に命じる。
「燃やして、もっとどんどん燃やして頂戴!」
 寒さに震えながら彼はせっせと札束を暖炉に放り込む。これだけあっても、まだまだ札束の山はうず高く積まれている。だが、たったこれだけでは灯油を買うのもままならない。
 いらだたしげに妻は舌打ちする。
「まったく、なんでこんな超ウルトラスーパーインフレになっちゃったのかしらっ。こんだけ札束があってもカップ麺も買えやしない」
「すまん、俺のせいだ……」
 申し訳なさそうな男の呟きは、幸いにも妻に届くことは無かった。
ファンタジー
公開:19/10/08 21:40

海月漂( にほん )

思いつきを文章にするのが好きです。
怪奇からユーモアまで節操無く書いていきたいです。
少しでも楽しんでいただけますように。

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