マスターのおまかせ

7
7

僕がバイトしているバーでは、マスターが客に出すカクテルがとっても評判だ。
「ねえ、マスターのおまかせ」
マスターは黙ってカクテルを出す。その女性は最後にスッキリした表情でお店を出ていった。

カクテルには特別な効力があるらしい。マスターの言うことには、恋のリキュール、喜びのリキュール、悲しみのリキュール、他にも感情を刺激するいろいろなリキュールがあって、客との会話や表情から絶妙な配合でカクテルにするそうだ。

「僕にもマスターのおまかせをください」
ついにある日、僕はお願いした。今日は僕の二十歳の誕生日だった。

コトッ。カウンターに座った僕の目の前にひとつのグラスが差し出される。グラスの中は金色に輝いていた。

初めてのお酒。マスターのおまかせだ。僕は目を閉じて一口飲んだ。

「苦っ!」
目を開けるとマスターはにっこり笑ってこう言った。
「とりあえずビールね。大人の仲間入り、おめでとう」
青春
公開:19/10/08 21:30
更新:19/10/08 22:14

よしお

400文字に収めるのに四苦八苦していますが、いろいろなジャンルにチャレンジしたいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容