分身の術

　巷では忍術が大流行していた。忍術を教えてくれる忍者道場は急増し、私もそれに通っていた。
「君も今日で卒業だ。最後に分身の術を教えてやろう。」
　私は内心で喜んだ。分身が作れれば、仕事もサボれるし、同時に様々なことができる。

　師匠に教えられた通りに念じてみると、もう一人の自分が現れた。
「ほら、もっと出してみるといい。」
　師匠に急かされ、5人の分身を作った。

「それで師匠。この分身どうやって消すんですか。」
　私の問いに師匠は首を横に振って答える。
「残念ながら、消す方法はない。」
「だってそれじゃあ、分身の奴らの食費とかどうするんですか。」
「安心したまえ、これで君も免許皆伝だ。忍者道場でも開くと良い。その術があれば、教師にも困らないだろうしね。ただし、忍術の使用料については、手数料を貰うよ。」

　私は頭を抱えた。分身の術にではない。増え続ける現代の魔術、ネズミ講に対してだ。