気の利いたセリフ一つ言えなくて…

俺はバカだ…目の前で後輩が泣いている。なのに俺は気の利いたセリフ一つ言うことが出来やしない…
単なる遊びのつもりだった。ちょっとした交遊のつもりだった。
激辛カレーを食べさせて、笑いを取ろうとしただけだった。そのカレーが目に入り、失明するなんて思わなかった。
酒が飲めないんだったら、運転手になるのは当然だと思った。車の中を汚してもいいと思った。当たり前のことだと思った。
だから俺は言った。「いじめているつもりなんてなかった。ただ、行為がエスカレートしてしまった。申し訳ありません」と。
勿論そんなお決まりのセリフで世間が許すわけがない。
だから俺は重ねてこう言った。「昔のバラエティではこんなのは当たり前だった。後輩とあの時の空気を共有しただけだ」と。
そのセリフはテレビ局を怒らせた。伏せられていた学校名と、俺の名前が全国に流れた。
何で俺はあの時、気の利いたセリフで身を守れなかったんだろう…