しゅわしゅわ

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日曜日の朝、父が腕にスプレーをかけていた。汗もかいている様子もない…どうしたんだろう?
「父さん、筋肉痛?」
僕の質問に父は首を振った。
「これはな、錆とりスプレーだ。こいつを使うとどんな錆でもイチコロさ。今日は町内会の野球大会だろ?父さん、実はこう見えて高校時代は野球部のエースだったんだ。だから、今日はこいつでお前と母さんを見返してやるぞ!」
「あなた、頑張ってね」
父は母から応援を受け、意気揚々と家を出た。

『ストライク!バッターアウト!』
審判の声が僕と母の耳にも届く。
父は見事に三振を決め、ヒットを出しても足が遅くてアウトを量産していた。
「おっかしいなぁ~。錆とりちゃんと使ったのにまだ効果ないのか?」
そう言って父はまたスプレーを使っている。
錆とりは錆がとれる際にしゅわしゅわと泡が立つ。それがないということは、父の野球の腕は錆びるまでもなく、へっぽこだったようだ。
公開:19/10/06 18:20

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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