節目の誕生日

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「ただいま」
「よっ!おかえり!」

「えーっ!お姉ちゃん、どうしたの?」
「まあ、色々あってね」
「実家にいていいの?明日、誕生日でしょ?」

突然父が口を開いた。
「そうか。三十になるのか…」
「そうだけど」
「節目の誕生日だな。おめでとう」

両親が先に寝てしまい、姉と二人きりになった。

「父さんに面と向かっておめでとうって言われたの初めてかもしれない」
「還暦迎えてだいぶ丸くなったからね」
「そういうもんなのかな」


バキッ

突然、大きな音がした。
姉の体の関節がひとつ増えた音だ。

「お姉ちゃん、おめでとう!」
「ありがとう。三十代も悪くないかもね」
姉は鏡に映る自分の姿をしばらく見てから言った。
「それじゃ、私、帰るわ。父さんと母さんにそう伝えといて」
「あ、うん。わかった」

関節がひとつ増えたことで、丸くなるどころか、むしろ一段と尖った姉の姿を、私は玄関まで見送った。
その他
公開:19/10/05 00:46

ぱせりん( ひろしま )

北海道出身です。

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