体の一部がなくなる話

最近、体の一部が消えて他人から生えてくる事件が増えてきた。ぼくだって、目覚めたらいきなり右腕が消失していた。
「まいったなあ」とぼくはつぶやく。
なくなったからには仕方がない。左腕で歯磨きをして、Ｔシャツを濡らしながら顔を洗う。
テレビをつけたらスポーツニュースが放映されていた。先日は横綱に３本目の腕が生え、片足が消えた大関を圧倒していた。世界的に有名な短距離選手に３本目の足がでて、その３本目の足が原因で転んでいた。
続く社会ニュースでも、ある将棋棋士がタイトル戦の前日に対戦相手の頭が生えてきたことが話題になっていた。そのまま対局となり、何度繰り返しても千日手で勝負がつかなかったそうだ。

体は天下の回りもの。そう思って我慢していたら、急にお腹が膨らんできた。
どうやら胎児が回ってきたらしい。
ぼくは胸の張りを覚えながら、さて、この子はだれの子供になるのだろうかと考えた。