京都土産

私たちは学祭の福引で一等賞を引いた。
賞品はA「トイレのない京都３日間」か、B「ネットのない福島3日間」。
A：トイレは宿泊先か、市外でのみ使用可。市内でトイレを使用した瞬間、特製ICチップがゲームオーバーを宣告、旅費が自腹に。
B：持参できるのはネット接続無しのガラケーのみ。
私は迷った末Bを、和香はAを選択。というのも、彼女は「心は京女」。
卒アルの‘将来の夢’は舞妓さん、モットーは‘はんなり’、購読動画は帯結びとおばんざいレシピ、特技は京都弁、スマホの着信音は祇園精舎の鐘の声。
2人は同じ日にそれぞれ旅先へ出発。
私は福島で心の洗濯をした。磐梯吾妻の絶景、秘湯三昧、復興支援体験、果物に喜多方ラーメン。ネットのない福島は私を大きく包んでくれた。
和香に会うなり、どうだったと聞いたが、返事がない。愛用の五芒星ストラップも椿柄風呂敷も持っていない。
以来、彼女は一度も「京都」を口にしない。