ピラニアの縁側の向こう

4
6

「縁側の向こう覚えてるか?」
「むかーし見た記憶では、なんか緑色してたような気がしますね」

家中に4畳半サイズの水槽が埋められいる。そこにピラニア2匹が住む。昔は沢山のピラニアがいたが、今は2匹の夫婦だけ。

「ばあさん、わしは縁側の向こうへ行ってみたい!たとえ生きて帰って来られなくても悔いはない!」
「じいさんが行きたいなら」
「ありがとう!ばあさん」
2匹は最後の夜を楽しんだ。

翌朝。最近では手に入らない牛肉入りおにぎりを手渡し涙ぐむばあさん。
1mほど助走を取り、じいさんはアマゾンのマグナムと恐れられた昔を思い出した。エネルギーが湧き、ありったけの力で泳ぎ、水面からジャンプ。背びれから細かい水泡が弧を描き、太陽の光に照らされキラキラと輝いた。胸ビレをバタつかせ空中を飛ぶ。「じいさん、カッコいい」ばあさんの目もキラキラ。アマゾンの女豹と異名を持つばあさんの心の奥で小さな炎が燃えた。
その他
公開:19/10/05 13:16

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容