一区切りの夜

8
10

今年も『節目さん』がやってくる。私はケトルでお湯を沸かし、上等の茶菓子を器に乗せて待った。節目さんは眠りかけの夢にやってくる。こたつでうとうとしていると、コンコンと窓が叩かれた。待ち侘びていた客人に、胸が踊る。
「いらっしゃい」
「こんにちは。いつもおもてなしありがとう」
節目さんは毎年姿が違う。今年は銀色が美しいビロード猫だ。
「これは一等、美味しいお茶だね」
「節目さんのために、用意しました」
チラチラと外で雪が舞う。
「また、一人歳をとりました」
一年、また一年と過ぎていく。
「もうというかまだというか。時間は人の気持ちとかなんの関係もなく、過ぎ去っていくものですね」
「それでいいんです。立ち止まってばかりはいられませんから」
それから私の瞼を一撫でした。
「夢を見ましょう。喜びも悲しみも一区切り。人生は連綿と繋がるひと鎖ですから」
除夜の鐘が鳴る。私はお茶を啜り、ため息をついた。
ファンタジー
公開:19/10/05 17:00
更新:19/10/05 17:42
節目

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容