色取鳥

ブラック企業勤務の友人が仕事を辞めたいが会社が許してくれないと嘆いている。私は友人の為に未使用の色取鳥を手配した。
友人は色取鳥を知らず、透明な鳥を見て驚く。驚くのはまだ早いぞ。
色取鳥は友人をつつき始めた。すると透明だった鳥は徐々に黒くなり、数分後には真っ黒になった。
友人に電話がかかってきた。ブラック企業に監査が入り、退職が認められたと一報が入った。
色取鳥は人から色を奪い取る鳥。黒を奪われた友人は無色となった。
無職となり、喜ぶ友人は鳥にも感謝した。だが、鳥が鳴くとその顔を険しくする。
私には分からないが、友人には色取鳥が鳴き声の代わりに苦労話を垂れ流す声が聞こえているのだろう。
友人はどうしたらいい？と聞いてくる。簡単だ。そのまま逃がしてやればいい。
真っ黒な鳥だ。烏と見分けがつかん。
なお、烏は英語でCROW。ひょっとすると、今頭上を飛ぶ烏は烏ではなく黒の色取鳥なのかもしれない。