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「先生、本のタイトルはどうしましょうか」

「彼岸までに決めておくよ」

「先生、「彼岸まで」発行部数一万を超えました」

ああ、そうか
(しっ、しまった。執筆に夢中で彼の話を聞き流してしまった。今後は気を付けよう)

「先生、さっき外に追い出した黒猫がまた戻ってきましたよ。また、外に出しますか?」

「戻ってくるものは仕方ない。放って置こうじゃないか。ここが嫌になったら勝手に出て行くだろう」

「あなた、この猫を飼うおつもりですか」

「いや、そうではないよ。彼が勝手に下宿しているだけだ。困ったものだ」
(いずれ、こいつも旅立つ時が来るだろう。それにしても日中からゴロゴロしおって。こいつを見ているとなんか無性に腹が立つな。こっちは締切りで大変だって時に。ああ、今度、生まれ変わったら猫になりたい。そして誰に気兼ねなく気楽に生きたいものだ。吾輩は猫である。この家で一番偉い主人であるなんてな」
公開:19/10/02 18:27
更新:19/10/02 18:28

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