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晩秋の朝。食事の片付けをしていると猫が勝手口を引っかいた。扉を開けると猫は私の脛に身体をぶつけるように入ってきた。腰を屈めてその背中を撫でる。と、その頭上へ、ヒュンバンッ! という音が響いた。猫は二階へ逃げていった。顔を上げると糸のようなものが見えた。恐る恐る立ち上がって確認すると、その糸は台所の壁面と薄霧に覆われた遠くの山陵との間へピンと張られていた。
「危険です。しゃがみなさい」
唐突に台所の壁がしゃべった。ワケも分からずその場にしゃがむと、ヒュンバン! があと五回続き、壁面には張り詰めた六本の糸が並んでいた。その張力のせいでベニアの壁は今にも弾けそうだったが、キリキリキリと、糸はさらに引き絞られていった。糸と壁とが軋む音が壁裏を通じて家中に反響する。私は耳を塞いでうずくまっていた。
やがて全ての音が止むと、緊張感の漲る静寂の中に「禁じられた遊び」が響き始めた。とても下手くそな。
「危険です。しゃがみなさい」
唐突に台所の壁がしゃべった。ワケも分からずその場にしゃがむと、ヒュンバン! があと五回続き、壁面には張り詰めた六本の糸が並んでいた。その張力のせいでベニアの壁は今にも弾けそうだったが、キリキリキリと、糸はさらに引き絞られていった。糸と壁とが軋む音が壁裏を通じて家中に反響する。私は耳を塞いでうずくまっていた。
やがて全ての音が止むと、緊張感の漲る静寂の中に「禁じられた遊び」が響き始めた。とても下手くそな。
ファンタジー
公開:19/09/30 10:31
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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