お日さまと雨傘

4
6

 私は太陽が嫌いだ。
 雨傘として生まれたからには、雨粒と戯れ、対峙し、主を守りたい。それが、私の生まれたお役目というものだ。
 主に不満はない。――そう、こうして、
 天気の日に私を干すことを除いては。

「よう、またお昼寝か」
 お天道が、私に話しかけてくる。
「昼寝ではない!」
「怒るなって。せっかくのべっぴんが台無しじゃねえか」
「からかうのも大概にしろ。どうして、こんな地味な見てくれの私が、美しいなどと言えようか」

 そう、お天道が嫌いだ。明るくて、まぶしくて、私はいやになる。

「お前はキレイだろう」
「ふん。太陽のお前を隠すような、曇った空の色だ」
「そうか? 俺には、春の桜がバーッと咲いた、キレイな色に見えるがな」

 キレイな色……。
 聞いた瞬間、骨の先からてっぺんまで、かーっと熱くなるのがわかった。

「お、赤茄子みたいに赤くなった」
「お前が照らし続けるせいだ!」
恋愛
公開:19/09/29 10:51
太陽 天気

やぎ太郎( 牧場 )

紙ではなく文字を食べて吐き出すヤギです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容