赤い糸の向こう側 #5(最終回)

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「マサミちゃん、最近ピンポンダッシュされたりもしたみたいで…。上…飛び降りた人が意識取り戻したから会いに行くって言うから、一緒についてくの。」
彼女はそう言って歩き始めた。
今しかない。
僕は、こちらへ近づいてくる彼女が「じゃあね。」を言う前に、告白しなければと思った。

「あのさっ………。」
「何?」
振り返った彼女は、ちょっと微笑んでいるように見えた。
「あの鉛筆、まだ使ってるよ。」
僕が話すのを待たず、彼女が先にそう言った。
「ほら、神田くんがくれた、あのサンタの絵のやつ。ウチが『くれ』って言ったらほんとにくれたの、めっちゃ嬉しかった。」
僕は…頰が緩むのを抑えられず、それを見られそうで、彼女から顔をそらしてしまう。それでも何とか目を向けた彼女は、いたずらっぽい笑顔をしていた。
「もう行かなきゃ…じゃあね。」
照れ臭くて、彼女が角を曲がるまで、そこから視線を動かす事すらできなかった。
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公開:19/09/28 22:47
更新:22/03/07 17:24
赤い糸の向こう側シリーズ

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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