ケミストリー

1
6

休日の遊園地は、大勢の客で賑わっていた。
園内では、うさぎの着ぐるみをきたスタッフが愛想を振りまき、子供に風船をプレゼントしたり、カップルは仲良く手をつなぎ、次のアトラクションはどれにしようか?と楽しげな会話をしていた。

遊園地の運営者がお勧めしている『未来の自分と会える世界』には、長蛇の列が絶え間なく出来ていた。

私は、未来に関する本を読みあさるほど、将来に対する不安を抱いていたので、この機会に、しっかりと確認し、どのような結末が迎えようと寛容な心で受け止める準備をしておきたかった。

私は、特別な装置を頭に装着し、未来を見た。

始めは、真っ白な映像だったが、次第に、くっきりと将来の自分の表情や環境が浮かび上がってくる。
しかし、それは未来ではなく、過去であった。
私は、人類が進化していく過程で、未来を受け容れる覚悟がなく、そのまま、溺れていく選択をしていた。
その他
公開:19/09/28 21:02

神代博志( グスク )









 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容