月熊記
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都東(ととう)の李娘(りにゃん)は博学才媛、先帝の末年、若くして名を虎榜(こほう)に連ね、ついで郡司に補せられたが、性、狷介(けんかい)、自ら恃(たの)むところ頗(すこぶ)る厚く、賤吏(せんり)に甘んずるを潔しとしなかった。
一年の後のこと、公用で沙賀美湖の畔に泊まりし時、遂に発狂した。夜中に自分を呼ぶ声あり、求めて闇に駈出し二度と戻らなかった。
翌年、県司監察、上総の王髪という者、勅命を奉じて葦柄南へ使い、途(みち)に釣九威の地に宿った。次の未明、駅吏が暗いと警告したにも関わらず、多勢を恃(たの)みに王髪は出発した。
残月の光を頼りに山中の藪を進むうち、一頭の猛熊が叢から躍り出た。あわや王髪に襲いかかると見えたが身を翻して藪に隠れた。中から女の声で「あぶなかった」とつぶやきが何度もあった。
聞き憶えのある声に王髪は思わず叫んだ。「その声は李娘殿ではないか?」
一年の後のこと、公用で沙賀美湖の畔に泊まりし時、遂に発狂した。夜中に自分を呼ぶ声あり、求めて闇に駈出し二度と戻らなかった。
翌年、県司監察、上総の王髪という者、勅命を奉じて葦柄南へ使い、途(みち)に釣九威の地に宿った。次の未明、駅吏が暗いと警告したにも関わらず、多勢を恃(たの)みに王髪は出発した。
残月の光を頼りに山中の藪を進むうち、一頭の猛熊が叢から躍り出た。あわや王髪に襲いかかると見えたが身を翻して藪に隠れた。中から女の声で「あぶなかった」とつぶやきが何度もあった。
聞き憶えのある声に王髪は思わず叫んだ。「その声は李娘殿ではないか?」
ファンタジー
公開:19/10/01 07:06
更新:19/11/05 15:35
更新:19/11/05 15:35
未完成
意外に「山月記」は長いのね
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武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。
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