しゅわしゅわ

人との出会いは化学反応である。

科学者の僕は理系女の彼女に恋をした。でも僕の口から出るのは化学式ばかり…気の利いた誘い文句の一つも出ない。
理系女の私は科学者の彼に恋をした。でも私の口から出るのは薬品名ばかり…女の子らしい話の一つも出ない。
でも、僕にしかできないことがある。
でも、私にしかできないことがある。

そうだ！惚れ薬を作ろう！

僕は耳にした。恋とはふわふわしたものだと。だから僕は気持ちが浮つく薬を作った。
私は耳にした。恋とは心が満たされるものだと。だから私は胸が詰まる薬を作った。
僕は香水だと言って彼女に薬をプレゼントした。
私はお茶に薬を入れて彼に飲ませる。
彼女のお茶を飲んで僕の心は弾けた。
彼がくれた香水をつけると私の心が弾けた。

「僕と付き合って下さい！」
「私と付き合って下さい！」

薬は混ざり合い、満たされた二人の心にしゅわしゅわと泡立つ何かが生まれた。