トイレのない京都

「トイレがない！」

京都の一人旅。おれは旅館で少し飲み過ぎたのか、散策路で急に催してきた。
しかし、探しても探してもトイレが見つからないのだ。

公園で用を足そうとすると、警官が来て止められ、民家に頭を下げてお願いすると「いちげんさんは、おことわりどす」と、おかしなことを言う。

事態は深刻になってきた。
発射10秒前のカウントダウンが始まった。
そんな時、誰かがポンと肩を叩いた。
「よっ！久しぶり」高校時代の友人だった。そのポンでカウントダウンがゼロになった。

おれは飛び起きると、胸を撫で下ろした。「夢か——」
しかし敷布団は、現実を語っていた。

「ねぇ、あなた。今日はお休みなんでしょ。出かけましょうよ」
妻だ。この歳で布団に地図を描いたなんて、言えない。
「京都なんてどうかしら？そういえばあなた観光地図、持ってたわよねぇ」

その前に、お尻の下にある世界地図を見せなけれならない。