葛藤するシューマイ弁当

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 秋晴れの昼間。暇を持て余してショッピングモールをブラブラしていると、床に醤油が落ちていた。もし踏んづけでもしたら、辺りに醤油が飛び散って、床や服がひどいことになっていたはずだ。俺は「危ない危ない」と呟きながら醤油パックを拾い、なんとなく胸ポケットへ入れて歩き始めた。
 すると、「自分は犯人に爆弾を仕掛けられ『シュウーマイ弁当』を買ってこいと命令されている」という考えが浮かんできた。俺は防犯カメラや警備員を避けながら弁当屋へ到着し渾身の笑顔で言った。
「シューマイ弁当一つ。テイクアウトで」
 俺は達成感を満喫しながらモールを出て、公園のベンチに腰をかけると弁当の蓋を開けた。
「……醤油がない」
 俺は愕然とし、そしてすぐに気づいた。
「醤油はある」
 しかし、公園にいる人々はこう思っている。
「使うのか。拾った醤油を」
 俺は、膝にシューマイ弁当、胸に爆弾を抱えて、身動きがとれなくなった。
その他
公開:19/09/27 17:43

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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