人獣の怪

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苔愛好サークルに所属している私は、同士と山まで苔採集に出かけていた。サークル内恋愛は基本禁止なのだが、私は生物部彼氏を作って一緒に行動していた。
「ここにあなたが好きな苔がありますよ」
「え、どこですか?」
私が胸を躍らせながら近づくと、彼は慌てて制止した。
「あ、踏んじゃいますよ!苔はここです」
「え、ここですか、苔?」
「違う違う、ここです、ここ」
私は踏まないように恐る恐る歩いた。
「こ、ここですか?」
「違う!苔ここ!」
「苔……苔……」
だんだん目眩がしてきた。
「こけ、こけ、ここ?こけここ?」
「ここ!ここ!」
「こけ?こけ?」
「ここ!ここここ、こけー!ここ!」
「ここ?!ここ、こけ?」
「こ、ここ!ここここここ、こけ!」
「ここ!こけー!」
「こけー!!」

後日、あの山には人語を解す妖怪が出るともっぱらの噂になり、以来登っていない。伝説は今もサークル内の語り草だ。
青春
公開:19/09/28 14:01
最後苔は踏まれました。

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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